英語の授業では、「話す・聞く・読む・書く」の4技能をバランスよく鍛えることが求められています。
背景には、センター試験が大きく変わり、今まではなかった「話す力」を試すようになったからだと考えられます。
この4技能の中で、一番指導が難しいのはどの力でしょうか。
私は、「話す力」ではないかなと思っています。
今日は、中学生からできる「話す力をつける授業」について、お話ししていきたいと思います。
大学入試で求められるスピーキングのレベル
これからの大学入試に求められるスピーキング力はずばり、「対話力➕知識、論理力」だそうです。
例えば、
(例題)”Which do you like black tea or coffee better?” 「紅茶とコーヒーのどちらが好きですか?」
という質問に対して、45秒で答えるというような質問が出されます。 これだけ聞くと、「簡単でしょ。”I like tea better than coffee.”って答えればいいんだよね?中2でも答えられるよね。」と思いますよね。 しかし、これだけでは、10秒もあれば、十分に答え終えてしまいます。 そこで、必要になってくるのが、知識や論理力なのです。 例えば、 ・イギリスが好きで、紅茶はイギリスの文化だから。 ・アールグレイ、アッサム、セイロンなど、豊富な種類があり、味もそれぞれに楽しめるから。 ・紅茶には、リラックス効果が得られ、また風邪の予防にもいいから。 こういった理由をプラスして話せることが求められているのです。 |
いきなり、中学生からこの内容を英語で表現できるようになるわけはないですし、他教科との関連もあります。
英語科で工夫して指導できることとして、
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これらの工夫をするだけでも、授業は大きく変わると思っています。
中学校でできる対話力アップのコミュニーション活動
①Questions and answer training
簡単な質問をリストアップします。 習った文法項目を使います。 ・How are you ? ・Do you like sushi? ・Do you play the guitar? ・What food do you like the best? ・Why? ・When is your birthday? などです。これをとにかくペアで何度も質問を変えて、行います。 目的は、「英語を話すことに慣れる、抵抗を感じないようにするため」です。 |
②スペリングコンテストと小テストの実施
長い休みの後には必ずスペリングコンテストを実施します。語数は、25〜50語で、出題は全て教科書からです。 積極性があっても、文法を知っていても、単語を知らなければ「しゃべれない」からです。 小テストは、課が終わるごとに行っています。 単語を2〜3問、ノートの書いた文章から2〜3文出しています。 定着を図るためには、やはり何度も練習させて、覚えることもある絶対に必要だからです。 |
③思考力を育てるその他の工夫
・Why? や What do you think so? などの問いを増やす。(書かせるのももちろんやります) ・海外の文化を積極的に紹介し、考える時間を取る。 例えば、「インドにはどうして多種類の言語が存在するのか。」ということを考えてみたり、ただ英語の知識を教えるだけでなく、他国の文化や歴史を知り、そこから考えを深めていくのも、英語の授業の役割なのかもしれません。 |
中学生で取り組めるスピーチのお題
①中学1年生
・自己紹介 ・家族や友達の紹介 ・自分の名前の由来 ・好きな季節 ・好きな有名人の紹介 ②中学2年生 ・将来の夢 ・尊敬する人 ・自分の好きなこと ・私のおすすめの〇〇 ③中学3年生 ・気になるニュース ・中学校生活で思い出に残っていること ・行ってみたい国 ・理想のロボット ・10年後の自分へ |
即興スピーチではなく、原稿を作り、原稿チェック、何回か練習をした上で、本番に臨みます。
即興スピーチが理想ですが、学力差の大きい公立中学校は、準備をしっかりとした上での発表の方がふさわしいかもしれません。
スピーチの評価項目
スピーチの評価項目 |
Loudly (声の大きさが十分か) |
Kindly(心をこめているか、伝えようとしているか) |
Clearly(はっきりと、口を大きく開けて話しているか) |
Pronunciation (発音) |
Memorization(暗記しているか) |
これらで評価するということを事前に生徒に伝えておきます。
覚えている子にはプラスで評価をしています。
これがモチベーションにつながっているようです。
私は、赤文字で示した部分を生徒の評価用シートに印刷しておいて、生徒が他の生徒の評価をするシステムを作っています。
スピーチを終えた後は、よかった生徒を何名かピックアップして、具体的にどこがよかったかを褒めています。
良いスピーチは、典型があるわけでなく、様々な良いスピーチがあるということ、他者から真似てどんどんブラッシュアップして欲しいという思いからです。
また、生徒には各クラス男子1名、女子1名、ベストスピーカーを選ばせています。
後に、表彰するなどして、形に残るようにしています。
最後に
思考力を伸ばし、そして英語力もつけ、それを表現できる力をつけるというのはとても難しいことのように思えます。
しかし、「小さな積み重ねが本当に大切。」なのです。
語彙や英語を話すことに抵抗をなくすことなど、中学1年生からできることを積み上げながら、この大学入試につながっていったらいいなと思っています。